特別な指定のない限り、下記手順によって試料の前処理 が行われます。 実際に行った前処理方法は、年代測定結果報告書に、試料ごとに記載されます。 (例: acid/alkali/acid, acid washes)
試料の前処理は、二次的な炭素を除去することを目的とします。 二次的な炭素が除去されていないと、真の年代を得られない可能性があります。 ただし前処理は、放射性炭素年代値が対象とするイベントの年代と同等であることを保証するものではありません。 それは、サンプルとイベントとの整合性によって決定されます。
古木効果、植物根の混入、バイオターベーション、再堆積、現代の炭素を含む細菌などの生物活動、年代の異なる複数のソースが一つのサンプルに含まれることなど、C14年代測定では年代にバイアスがかかる原理的な問題があります。前処理は、これらの問題を引き起こす可能性のあるソースを可能な限り除去し、目的とするソースの炭素のみにすることを目的とします。もし、特別な前処理の必要があると思われる場合は、事前にご相談ください。
実際、そういった場合はよくあります。よくあるケースとしては、骨のサンプルのC、N含有量、C/N、C13などが典型的な試料の値の範囲外である場合です。また、試料の完全な前処理を行えない場合、例えばチャコールがアルカリ処理を行うと溶解してしまう場合は、年代測定を行うかどうかお尋ねします。アルカリ処理を行えないということは通常の試料の反応ではありませんから、もしかするととても湿潤な環境から得られたサンプルかもしれないのですが、若すぎる年代結果になるなど年代値に影響を及ぼす可能性があることをお伝えします。骨の試料は判断が難しいです。C、Nなどの指標が範囲外であるといことは、コラーゲンが長い間かかって変質、汚染されて失われてしまった可能性を示唆します。それから、試料が石炭のような場合は、年代測定を行わないようお勧めします。おそらくとても古い年代となりますので。しかし、最終的に決めていただくのはクライアントですので、年代測定を行うことを拒否することは決してありません。いつも、できる限りの情報をお伝えして納得のいく決定をしていただくようにしています。そのエリアには石炭はないので、とにかく測定してくださいと回答いただき進めた結果、とても古い年代結果となることもありました。しかし、それも結果ですので受け入れるより以外ありません。
前処理の重要性– 試料の前処理について理解することは、それが最終的な年代に直接影響を与えるので非常に重要です。 前処理に関するご質問などがございましたいつでもご連絡ください。
最初に蒸留水中で試料をていねいに粉砕します。 次にHClにより炭酸塩を除去した後、NaOHにより二次的に混入した有機酸を除去します。更にHClで洗浄し、最後にアルカリによって中和します。洗浄の回数、時間、温度、薬品の濃度などは試料により異なります。それぞれの薬液は次の薬液を適用する前に中和します。 これらの化学的処理の段階で、付着された堆積物や細根などの汚染物質は物理的に取り除かれます。この前処理は ”完全な前処理(full pretreatment)” とみなされます。 まれに、どの分画を測定したか明快にするため “acid/alkali/acid – insolubles” と追記される場合があります。
適用される試料 – charcoal, wood, plant, peat, textiles
アルカリ可溶成分の放射性炭素測定を行うことがあります。これは土壌の埋没環境、状態などからアルカリ可溶成分の方が、より正確な年代が得られると判断された場合に適用されます。また二次的に混入した有機酸の存在を確認するために行われることもあります。
試料は炭酸塩を取り除き有機結合を弱めるために酸処理を行います。アルカリ洗浄(acid/alkali/acid参照)の後、アルカリ可溶成分を含んだ溶液を分離し、酸と混合します。抽出した可溶分画を洗浄乾燥後、燃焼します。
acid/alkali/acid(酸/アルカリ/酸洗浄)の処理後、管理された条件下(pH 3 and temperature at 70°C)で亜塩素酸ナトリウム(NaCIO2)に浸漬されます。 この手順で、木材セルロース以外の物質をすべて取り除くことができます。
試料の表面積は可能な限り増やします。 固体、堆積物は粉砕、繊維材料は細断します。 炭酸塩が無いことを確実にするために酸(HCI)洗浄を繰り返し行います。
薬品濃度、温度、露出時間、洗浄回数などは試料の特質によって異なります。アルカリ洗浄によるアルカリに可溶炭素の除去は行えません。
測定結果は、全有機炭素の年代を反映します。研究者の方は試料の特性に基づいて潜在的なコンタミネーションの影響を考慮して確度を検討する必要があります。
適用される試料 – sediments, peat
最初に試料のもろさをテストします。 非常に柔らかい骨材は、コラーゲンが(骨の中に含まれているコラーゲンのようなタンパク質は、リン灰石結晶構造の補強剤の役目をしています)残っている可能性が少ないことを示しています。
試料は、イオン交換水で洗浄し、外側の表面層をけずり軽く砕きます。 骨の鉱物成分(リン灰石)が無くなるまで、繰り返し冷希塩酸で処理し除去します。 この操作の段階で、微細な植物根などの存在をしらべ、存在する場合は除去します。 引き続き、with alkali (アルカリ使用)の場合は、二次的有機酸の除去を確実にするために水酸化ナトリウム(NaOH)で処理を行います。 without alkali (アルカリ不使用)の場合は、試料の保存状態が良くないため、アルカリ処理によってすべての有機物が除去されないように、アルカリ処理を省略します。
適用される試料 – bones, teeth
石灰質の試料は、まずイオン交換水で洗浄し有機堆積物や付着物を取り除きます。試料を粉砕し、二次的炭酸塩を除去するため繰り返し塩酸によるエッチングを行います。
厚い貝殻には、エッチング前に硬いプライマリコアが残るまで表面を物理的に削ります。多孔質炭酸塩ノジュールとカリーチの場合には、酸が浸透するように非常に長い時間処理を行います。処理時間、濃度、および繰り返しの回数は、試料によって異なります。
適用される試料 – shells, coral, caliche, calcareous nodules
地下水から沈殿抽出した炭酸塩は、通常、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムの添加によりアルカリ性の状態にあります。この溶液はイオン交換水を使用して、オリジナルの試料容器中で中和されます。よりサイズの大きい希釈が必要な場合は、沈殿および溶液は別容器に移し中和します。大気への露出は最小限に抑えます。
適用される試料 –strontium carbonate, barium carbonate (主に地下水からの沈殿抽出による)
主に用いる溶媒はトルエン、ヘキサン、アセトンです。 これら溶媒による処理を行い汚染を除去した後、年代測定を行います。
適用される試料 – 繊維, タールなど保存剤による汚染が疑われる試料
前処理を行わすに測定を行います。
最終更新:2020年6月