放射性炭素年代測定と核実験起源放射性炭素(Bomb Carbon)

  • 放射性炭素年代は全地球的に放射性炭素濃度が過去から現在まで一定であったことを前提としています
  • Bomb効果(爆弾効果)とは、核実験の結果、”人工”放射性炭素が大気中に放出されたことを指します
  • 核実験は禁止されましたが、現在もその影響は残っています

放射性炭素年代測定は、放射性炭素年代は全地球的に放射性炭素濃度が過去から現在まで一定であったという仮定に基づいて行われます。

つまり、地球における放射性炭素(C14)濃度が、大気圏中で経時変化してこなかったこと、そして、その当然の結果として、生物圏が、平衡によって大気圏と同じ放射性炭素濃度を持つという仮定に基づいているのです。

放射性炭素は、大気圏上層で、宇宙線の二次中性子と窒素の反応によって生成され、地球圏の炭素サイクルに組み込まれます。生成されたC14は大気中で酸素原子と反応し、二酸化炭素(CO2)を生成します。この二酸化炭素は、C12およびC13との反応で作られる二酸化炭素と違いはありません。よって、C14との反応でできる二酸化炭素は、他の安定な同位体(C12,C13)と同様の道を歩むのです。

大気圏と生物圏の間で、平衡状態となるまで、混合・交換を行います。当初、 放射性炭素年代測定 は、この他の要因によるC14の放出はないということを前提としていました。

しかし、近年、放射性炭素の研究者は、放射性炭素測定年代の結果を暦年に変換するだけではなく、地球規模でのC14濃度に影響を与えたさまざまな要因を考慮して、較正を行わなければなりません。その要因のひとつが核実験による影響です。

C14濃度に影響を与える人間活動

過去に2度、人間の活動によって、地球規模でのC14濃度が大きく変動しました。

ひとつは化石燃料の燃焼、もうひとつが核実験によるC14の放出です。

石炭等の化石燃料の大量燃焼は、大気中の炭素リザーバー中の放射性炭素濃度を大きく減少させました。(Suess 効果/スース効果)

それに対し1950年代~1960年代の核実験は大気中のC14濃度を劇的に増加させました。(Bomb 効果/爆弾効果)

Bomb効果(爆弾効果)とは?

核実験の影響により”人工の”放射性炭素が大気中に放出されました。これをBomb効果(爆弾効果)といいます。

核実験により自然に反する量のC14が大気中で発生する反応がもたらされました。核爆弾によって発生した大量の熱中性子束が、大気中の窒素原子と反応し、C14を生成したのです。こうしてできたC14は、「核実験起源放射性炭素(Bomb carbon)」または「人工放射性炭素」として知られています。

文献によると、1950年代から1960年代における核実験によって、大気中のC14の濃度は約2倍となったことが1965年頃の測定で判明しました。そして、核実験起源放射性炭素の濃度は、1963~1965年の間には、通常濃度の約100%上回り、北半球においては1963年、南半球においては1965年にピークに達しました。


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核実験起源放射性炭素と放射性炭素年代測定との関連性

人為的要因による地球圏のC14濃度の変動によって、放射性炭素年代測定のための標準試料を定義する必要が生じました。放射性炭素年代測定では、化石燃料の燃焼または核実験の影響による人為起源のC14に汚染されていない有機物がリファレンスとして必要となりました。

そこでアメリカの規格基準局(National Bureau of Standards)が所持していたシュウ酸が標準試料として採用されました。そのC14濃度は、 結果 に引用される放射性炭素年代測定の基準年となるAD 1950の木のC14濃度とほぼ同等です。


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放射性炭素濃度への長期的な影響

核実験が禁止された現在でもその影響は残っています。文献によると、核実験中に発生した過剰なC14は、主に地球規模の炭素交換サイクルによって、徐々に減少しています。1990年代には、C14濃度は1950年の理論上の濃度と比較して約20%だけ高い数値であることが、シュウ酸参照基準と比較した測定で分かりました。

核実験起源放射性炭素は、つまるところ、C14の人為的な放出です。放射性炭素の研究者は、この知識を様々な炭素リザーバーにおけるC14の挙動についての理論を解明するために利用し、こうした研究者によって、木年輪間では放射性炭素年の交換が起こらないことが解明され、年輪年代と放射性炭素年代の組み合わせによって暦年代較正曲線が作成されました。

その他にも、核実験起源放射性炭素や一般的な放射性炭素の存在を監視する研究が存在します。

地球化学的な海洋研究では太平洋、大西洋、インド洋などで海水のC14濃度を測定し、海洋の核実験起源放射性炭素のマッピングを行いました。これらのデータによって、海洋におけるC14の挙動、交換時間、滞留時間の解析が行われています。

1990年から2002年の World Ocean Circulation Experimentにおいて、溶存無機炭素のC14の測定が行われました。

Reidar Nydal、Knut Lovsethは1962年~1993年にかけて北半球、南半球で大気中のC14濃度を測定しました。